iDeCo、NISA、変額保険はどう違う?向いている人は?
2023.12.08

iDeCo、NISA、変額保険はどう違う?向いている人は?

【この記事を読んでわかること】

・iDeCoは掛け金を自分で運用し、その成果を60歳以降に受け取る制度。所得税や住民税を節税しながら老後資金を貯めたい人に向いている

・NISAは投資の利益にかかる税金が無期限でゼロにできる制度。株式や投資信託などに少額から投資したい人に向いている

・変額保険は保険料の一部を保険会社が運用してくれる保険。死亡保障を得ながら大きくお金を増やしたい人に向いている

給料はなかなか上がらないけど、税金や社会保険料は高いし、物価も上がって困る……。そう肌で感じている方も多いでしょう。こんな時代にお金を増やすには、お金自身に働いてもらう資産運用が欠かせません。

 

そこで今回は、iDeCo・NISA・変額保険という、資産運用の3つのしくみをご紹介。iDeCo・NISA・変額保険の違い、iDeCo・NISA・変額保険のメリットやデメリット、そしてiDeCo・NISA・変額保険がおすすめの人を説明します。

iDeCo・NISA・変額保険はどう違う?

iDeCo・NISA・変額保険の主な特徴と違いは、次のとおりです。

iDeCo・NISA・変額保険の主な特徴と違い

  iDeCo NISA 変額保険
利用できる人 20歳以上65歳未満 18歳以上 0歳〜70歳
(商品により異なる)
投資対象商品 定期預金・保険・投資信託 【つみたて投資枠】
金融庁が定めた基準を満たす
投資信託・ETF
【成長投資枠】
上場株式・ETF・REIT・投資信託
特別勘定の投資信託
投資額上限
(年間)
14.4万円〜81.6万円
(働き方などにより異なる)
【つみたて投資枠】
120万円
【成長投資枠】
240万円
(生涯投資枠1800万円)
商品により異なる
税制優遇 掛金が全額所得控除
運用益非課税
受け取り時の税金控除
運用益非課税 生命保険料控除
運用益非課税
解約時の優遇(50万円まで無税)
投資方法 積立投資 【つみたて投資枠】
積立投資
【成長投資枠】
積立投資・一括投資
積立投資
資産の引き出し 原則60歳まで不可
60歳〜75歳までの間に引き出す
いつでも可能 可能
(10年以内は解約控除がかかる)
死亡時の保障 なし なし あり(死亡保険金)
口座開設手数料 2,829円(税込) 無料 無料
口座管理手数料 年2,052円〜7,000円程度
(金融機関により異なる)
無料 運用関係の費用
(商品により異なる)

(株)Money&You作成

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)

iDeCoは、毎月掛け金を積み立てて定期預金・保険・投資信託で運用し、その成果を60歳以降に受け取る制度です。毎月の投資金額は5,000円からで、掛け金の上限は働き方や企業年金の有無などで異なります。iDeCoは老後の年金の上乗せとなる「自分年金」を作る制度として知られています。iDeCoの一番の特徴は、掛け金が全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になり所得税、住民税が安くなるなど、他の制度と比較して、税制優遇が手厚い点です。詳しくは以前の記事でも解説していますので、ご覧ください。

NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)

NISAは、投資で得られた利益にかかる税金がゼロにできる制度です。投資で得られた利益には、通常20.315%の税金がかかります。2024年からは制度が改正され、「つみたて投資枠」「成長投資枠」の2つの投資枠を利用しながら非課税の投資ができます。2024年からNISAは、一定の金額内にはなりますが、国内外の株式、投資信託、ETFなど幅広い商品に投資をすることができ、非課税かつ無期限で運用できるのが大きな特徴です。こちらも、以前の記事で紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

変額保険

変額保険は、生命保険と資産運用が一緒になったような保険です。払い込まれた保険料の一部を「特別勘定」として投資信託などで保険会社が運用します。そして、万が一のときの死亡保険金や満期保険金、解約返戻金の金額が、特別勘定の運用次第で変わります。運用がうまくいっていれば、死亡保険金、満期保険金や解約返戻金の金額が増えますし、運用がうまくいかなければ、減ります。ただし、死亡保険金については、最低保証があります。変額保険は、他の制度と比較して保障がある点が大きな特徴と言えます。

iDeCo・NISA・変額保険のメリット・デメリット

iDeCo・NISA・変額保険の概要がわかったところで、メリットとデメリットを確認してみましょう。

iDeCoのメリット・デメリット

iDeCoの最大のメリットは、掛け金を出すとき・運用中・受け取るときの3つのタイミングで税制優遇が受けられることです。

 

  • ・掛け金を出すとき:掛け金の全額が所得控除になるため、毎年の所得税や住民税が減らせる
  • ・運用中:運用で得られた利益にかかる税金が非課税になる
  • ・受け取るとき:「退職所得控除」「公的年金等控除」によって、税金の負担を減らせる

 

特に大きいのが「掛け金を出すとき」。たとえば、所得税率5%(住民税は一律で10%)の会社員がiDeCoで毎月2万円の掛け金を出したとします。すると、年間の掛け金の合計額(24万円)が所得控除の対象に。それにとって、毎年の所得税が年1万2,000円、住民税が2万4,000円、合計3万6,000円安くなります。仮に30年間掛け金を出したら、税金はトータルで108万円も安くなる計算です。


NISAには、所得控除の制度はありませんし、変額保険も掛け金が所得控除(生命保険料控除)になりますが、全額ではないので、節税という点では、iDeCoが一番効果があるでしょう。

 

一方で、iDeCoの掛け金は原則60歳まで引き出せない点には注意が必要。急にお金が必要になったとしても、iDeCoのお金を充てることはできません。とはいえ、老後資金を貯めるためであれば、お金を引き出せないことはむしろメリットと捉えることもできます。

NISAのメリット・デメリット

NISA、iDeCo、変額保険のどれも運用益が非課税になりますが、NISAは、2024年からは、制度が恒久化され、非課税期間が無期限になります。つまり、いつでも自分の好きなタイミングで、期限を気にすることなく資産運用ができるということです。それに加えて、多くの金融機関では毎月1,000円程度、ネット証券などでは100円程度から投資を始めることが可能。口座開設・維持の費用もかかりません。iDeCoは、掛け金の最低金額が5000円、変額保険は保険会社によりますが、5000円程度からとしているところが多いようです。また、iDeCoは、口座開設時や口座管理手数料がかかり、変額保険も商品によりますが、運用関係の費用がかかります。

 

また、新NISAのつみたて投資枠では金融庁の定める基準を満たした、中長期的に安定的にお金が増やせると考えられる投資信託に投資ができます。iDeCo、変額保険でも投資信託に投資ができますが、新NISAのつみたて投資枠でラインナップされている投資信託のように、金融庁のスクリーニングがあるわけではありません。

 

さらに、新NISAの資産はiDeCoと違い、いつでも引き出すことができます。変額保険も途中で引き出すことはできますが、10年以内に引き出すと解約控除がかかってしまいます。


自由度という点からは新NISAが使い勝手が良いでしょう。ただし、頻繁に引き出してしまうようでは、お金が貯まりにくいので、注意する必要があります。

 

一方で、新NISAには、iDeCoや変額保険にある掛け金が所得控除になる制度はありませんので、そこはデメリットと言えるでしょう。

変額保険のメリット・デメリット

変額保険は保険ですから、加入者が亡くなったという場合には、死亡保険金が受け取れるのが大きなメリットです。変額保険の死亡保険金には最低保証があるので、特別勘定での運用成果にかかわらず一定額は受け取れます。さらに、特別勘定の運用成果がよければ、死亡保険金の金額も増えます。iDeCoやNISAと違い、いざというときに死亡保険金を受け取れるのは最大のメリットと言えるでしょう。

 

また、保険は一般的に物価が上がるインフレに弱い商品ですが、変額保険は比較的インフレにも対応できる商品といえるでしょう。また、毎年の掛け金は生命保険料控除の対象になり、最大で所得税4万円・住民税2.8万円の所得控除が受けられます(2012年1月以降の新制度の場合)。

 

しかし、特別勘定の運用がうまくいかない場合は、死亡保険金の上乗せはありませんし、解約したときの解約返戻金も少なくなってしまいます。とくに、解約返戻金には最低保証がないので、運用成果がよくないときには元本割れして大きく減ってしまう可能性があります。

もっとも、運用成果がよくなければ元本割れするという点は、iDeCo(投資信託の場合)やNISAも同様です。また、通常の投資信託に比べて、特別勘定で運用される投資信託は、運用コストが割高です。

iDeCo・NISA・変額保険が向いている人は?

ここまでの話を踏まえて、最後にiDeCo・NISA・変額保険が向いている人をそれぞれまとめます。

iDeCoが向いている人

  • ・所得がある(多い)人
  • ・毎月1万円以上投資ができる人
  • ・老後資金を貯めたい人
  • ・貯蓄が苦手な人

 

iDeCoでは掛け金が所得控除でき、所得税・住民税が安くなります。これは他の制度にはない仕組みです。この恩恵は、所得がある人・多い人ほど大きくなります。


また、iDeCoではどの金融機関でも手数料がかかります。掛け金の金額が少ないほど、手数料の負担割合が増えてしまうため、毎月1万円以上は積み立てられるとよいでしょう。


60歳まで引き出せないことをiDeCoのメリットととらえると、老後資金を貯めたい人や貯蓄が苦手な人にもおすすめできます。

NISAが向いている人

  • ・毎月の投資金額が少ない人
  • ・老後資金以外のお金を貯めたい人
  • ・投資信託だけでなく、個別株にも投資したい人
  • ・60歳以上など、年齢に関係なく長期投資したい人

 

NISAがおすすめなのは、毎月の投資金額が少ない人。NISAを利用すれば1,000円程度の少額でも投資が始められます。また、お金をいつでも引き出せますので、教育資金・住宅資金・余暇資金など、老後資金以外のお金を貯めるのにも向いています。


2024年からの新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠を利用して非課税の投資ができるようになります。さまざまな投資先を検討したい人にもよいですね。


また、iDeCoでは最長でも65歳未満までしか掛け金が出せません。NISAには年齢の上限がないので、60歳以上など、年齢を気にせずに長期投資したい場合にも利用できます。

変額保険が向いている人

  • ・死亡保障がほしい人
  • ・生命保険料控除を活用したい人
  • ・保障を得つつ、大きくお金を増やしたい人

 

変額保険を利用すれば、死亡保障を得ながら投資をすることができます。変額保険が向いているのは、保障と資産運用を一度に手に入れたい方です。変額保険での資産運用は、特別勘定を選ぶ程度で、あとは保険会社がやってくれるので、手間がかかりません。また、生命保険料控除も受けられるので、毎年の所得税・住民税を減らすこともできます。万が一の保障を得ながら大きくお金を増やす期待ができます。


iDeCo・NISA・変額保険の違い、メリットやデメリット、おすすめの人を紹介してきました。どの仕組みも資産運用によってお金が増やせる可能性がありますが、細かな部分で違いがあります。

 

iDeCo・NISA・変額保険は、併用することもできます。可能ならば、併用したほうが手厚い投資ができますが、毎月の資金には限りもあるでしょう。ですから、各制度を検討して、自分に合ったものから取り組むことをおすすめします。

高山 一恵

高山 一恵(たかやま かずえ)

Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設⽴。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を⾏ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)、『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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