
年金に6万円上乗せ「年金生活者支援給付金」がもらえる人は?
<この記事を読んでわかること>
・年金生活者支援給付金は老齢・障害・遺族基礎年金をもらっている人が条件を満たすともらえる給付金
・老齢年金生活者支援給付金の場合、毎月最大で5,310円、年額で約6万円が支給される
・年金生活者支援給付金をもらうには「年金生活者支援給付金請求書」の提出が必要
年金は老後の収入の柱。生涯にわたって受け取れますが、金額が心許ない…という方もいるでしょう。そこで知っておきたいのが「年金生活者支援給付金」。条件を満たす場合、年金が毎月約5000円、年約6万円上乗せでもらえます。今回は、年金生活者支援給付金の仕組みと種類、年金生活者支援給付金の金額、そして年金生活者支援給付金がもらえる条件を紹介します。
年金生活者支援給付金をもらう手続きはどうする?
年金生活者支援給付金は、公的年金や所得が一定の基準額以下の人に対して、年金に上乗せして支給する給付金です。消費税の税率が10%に引き上げられた2019年10月から実施されています。
年金生活者支援給付金には、大きく分けて
・老齢年金生活者支援給付金
・障害年金生活者支援給付金
・遺族年金生活者支援給付金
の3種類があり、それぞれ対象者やもらえる金額が異なります。
なお、どの年金生活者支援給付金も国民年金(基礎年金)の受給者を対象にした制度です。例えば、遺族基礎年金を受給していない場合(遺族厚生年金のみを受給している場合)は対象外となります。
老齢基礎年金の受給者がもらえる老齢年金生活者支援給付金
老齢年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金をもらっている人に支給される給付金です。
老齢年金生活者支援給付金がもらえるのは、以下の支給要件をすべて満たしている方です。なお、以下はすべて2024年10月時点の金額で紹介します(年によって金額が多少増減します)
【老齢年金生活者支援給付金の支給要件】
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税
(3)前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、
・昭和31年4月2日以後生まれ…88万9300円以下
・昭和31年4月1日以前生まれ…88万7700円以下
※所得には障害年金や遺族年金などの非課税所得は含まない
【老齢年金生活者支援給付金の給付額】
老齢年金生活者支援給付金の給付額は、月額5,310円を基準に、保険料納付済期間などに応じて算出されます。具体的には次の(1)(2)の合計額になります。
(1)保険料納付済期間に基づく額(月額)
=基準額5,310円×保険料納付済期間/被保険者月数480月
(2)保険料免除期間に基づく額(月額)
=基準額1万1,333円※×保険料免除期間/被保険者月数480月
※昭和31年4月2日以降生まれは、国民年金保険料の全額免除、4分の3免除、半額免除を受けていた場合の基準額は1万1,333円。4分の1免除の場合は5,666円
細かく紹介しましたが、平たくいうと国民年金保険料を40年間(480月)納めていれば5,310円で、免除や未納の期間がある場合は老齢年金生活者支援給付金の金額がその分減る、ということです。
なお、上記で紹介した人のうち、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、
・昭和31年4月2日以後生まれ…78万9,300円超88万9,300円以下
・昭和31年4月1日以前生まれ…78万7,700円超88万7,700円以下
の人には老齢年金生活者支援給付金ではなく「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
これらの人に老齢年金生活者支援給付金が支給されると、基準額を少しだけ超えていて老齢年金生活者支援給付金をもらえない人よりも収入が多くなってしまいます。これは不公平ではないかということで、補足的老齢年金生活者支援給付金が支給されるようになっています。
補足的老齢年金生活者支援給付金の計算式は複雑なのでここでは割愛しますが、老齢年金生活者支援給付金よりも少なくなります。
障害基礎年金の受給者がもらえる障害年金生活者支援給付金
障害年金生活者支援給付金は、障害基礎年金をもらっている人に支給される給付金です。
障害年金生活者支援給付金がもらえるのは、以下の支給要件をすべて満たしている方です。
【障害年金生活者支援給付金の受給要件】
(1)障害基礎年金の受給者
(2)前年の所得が472万1,000円以下
※所得には障害年金や遺族年金などの非課税所得は含まない。また、前年の所得は扶養親族の数に応じて増額
【障害年金生活者支援給付金の給付額】
障害年金生活者支援給付金は、障害等級1級・2級で異なります。
・障害等級2級:月額5,310円
・障害等級1級:月額6,638円
障害基礎年金は、障害等級が2級までの人が対象です。障害年金生活者支援給付金もそれと同じく、障害等級2級までが対象です。障害等級3級の人には支給されません。
遺族基礎年金の受給者がもらえる遺族年金生活者支援給付金
遺族年金生活者支援給付金は、遺族基礎年金をもらっている人に支給される給付金です。
遺族年金生活者支援給付金がもらえるのは、以下の支給要件をすべて満たしている方です。
【遺族年金生活者支援給付金の受給要件】
(1)遺族基礎年金の受給者
(2)前年の所得が472万1,000円以下
※所得には障害年金や遺族年金などの非課税所得は含まない。また、前年の所得は扶養親族の数に応じて増額
【障害年金生活者支援給付金の給付額】
月額5,310円
ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給しているときは、1人分の給付額は5,310円を子の数で割った金額となります。たとえば、3人の子が遺族基礎年金を受給している場合、1人あたりの金額は5,310円÷3人=1,770円となります。
年金生活者支援給付金をもらう手続きはどうする?
年金生活者支援給付金の手続きは年金事務所で行います。支給手続きは、年金をこれから新たに受給するか、すでに受給しているかで変わります。
新たに老齢基礎年金を受け取る場合
①老齢年金生活者支援給付金請求書を提出する
老齢年金生活者支援給付金の受給対象者になることが見込まれる人には、65歳になる約3ヶ月前に日本年金機構から届く「老齢基礎年金請求書」に「老齢年金生活者支援給付金請求書」が同封されてきます。これらの請求書に必要事項を記載して年金事務所に提出します(郵送も可能です)。
②支給決定通知と振込通知書が届く
審査が通ると、日本年金機構から「支給決定通知」が届きます。これで老齢年金生活者支援給付金がもらえるようになります。一度支給決定通知を受けたら、2年目以降は手続きすることなく年金生活者支援給付金をもらうことができます。
また、年金生活者支援給付金が振り込まれる月の上旬には、日本年金機構から「振込通知書」が届きます。
なお、審査の結果、支給要件を満たさない場合は「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。この場合、年金生活者支援給付金は支給されません。
③年金生活者支援給付金が支給される
年金は偶数月の15日(土日・祝日の場合は直前の平日)に、2ヶ月分がまとめて支給されます。年金生活者支援給付金も同じ日に支給されます。
なお、新たに障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取る場合の手続きも、老齢基礎年金の場合と同じです。障害基礎年金、遺族基礎年金の請求をするときに年金生活者支援給付金請求書を提出します。
すでに年金を受け取っている場合
すでに老齢(障害・遺族)基礎年金をもらっている人が、前年の所得が減るなどして新たに年金生活者支援給付金の対象になるケースもあります。この場合、日本年金機構から9月頃に「年金生活者支援給付金請求書」が届きます。必要事項を記入して提出し、審査で支給要件を満たすことが確認されれば、年金生活者支援給付金がもらえるようになります。
なお、
・前年の所得が基準額を超えた
・同一世帯に住民税が課税されている家族がいる(老齢年金生活者支援給付金の場合)
・年金が全額支給停止になった
など、支給要件を満たさなくなった場合には、年金生活者支援給付金の支給が停止されます。ここまでお話ししたとおり、年金生活者支援給付金はあくまで所得が少ない人の生活を支えるための制度なので、支給要件を満たさない場合には支給されなくなってしまうのです。
ただ、再び支給要件を満たすようになった場合には、年金生活者支援給付金が受け取れるようになります。このときは、新たに年金生活者支援給付金請求書を提出する必要があるので、年金事務所に確認してみましょう。
年金生活者支援給付金について詳しく紹介してきました。条件を満たしているならば年金額が年約6万円上乗せできるのは大きいですよね。ただ、年金生活者支援給付金をもらうには手続きが必要なので、忘れずに手続きしましょう。
また、年金生活者支援給付金のほかにも、年金にはさまざまな制度や手続きがあります。そのため、「わからないからやらない」「面倒くさいからいいや」となってしまう人もいるかもしれません。しかし、それで増えるはずの年金が増えないというのはもったいないですよね。年金事務所に相談するなどして、自分が利用できる制度やしなければならない手続きを確認してみてくださいね。

高山 一恵(たかやま かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設⽴。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を⾏ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)、『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。