外貨建て保険は円安と円高どっちで加入したほうが得?
<この記事を読んでわかること>
・外貨建て保険は保険料や保険金などのお金のやり取りが外貨で行われる保険
・外貨建て保険に加入するなら円高のときのほうが保険料を抑えられて得
・外貨建て保険の保険金や解約返戻金、満期保険金などは円安のときに受け取ったほうが得
海外の金利上昇を背景に、外貨建て保険が人気です。外貨建て保険には外国の通貨と比べて円安か円高かを表す為替レートが大きく関わってきます。2022年以降、為替レートは円安に動いていますが、外貨建て保険に加入する場合、円安と円高、どっちが得なのでしょうか。また、外貨建て保険の保険金を受け取るときは円安と円高のどっちがいいのでしょうか。
今回は外貨建て保険と為替レートの関係を紹介していきます。
そもそも、外貨建て保険ってなに?
外貨建て保険は、契約者が支払う保険料やもしものときに受け取る保険金、満期保険金や解約返戻金といったお金のやりとりが外貨で行われる保険です。外貨建て保険では、米ドル・ユーロ・豪ドル・ニュージーランドドルといった外貨がよく利用されています。
保険料の支払いや保険金などの受け取りを日本円で行う保険を円建て保険といいます。
外貨建て保険には、主に次のような種類があります。
・終身保険:保障が一生涯続く保険(解約しない限り遺族は必ず死亡保険金を受け取れる)
・養老保険:保障期間中に亡くなると死亡保険金、満期を迎えると満期保険金が受け取れる保険
・個人年金保険:契約時に定めた年齢に達したあとに年金形式でお金を受け取れる保険
外貨建て保険の保険料を払うときには、日本円を外貨に両替して支払います。保険金や解約返戻金は外貨で支払われるので、生活のために使いたいなら、その外貨を日本円に両替する必要があります。つまり、外貨建て保険は為替レートの動向によって、利益(為替差益)や損失(為替差損)が生まれるということなんです。
外貨建て保険にみなさんがメリットや魅力を感じるのは、円建て保険よりも予定利率が高いことです。
予定利率とは、保険会社が保険の契約者に支払いを約束する運用利回りのこと。高ければ、その分支払ったお金よりも増えるわけですから、魅力に感じるのは当然です。
国が定める標準利率をもとに各保険会社が予定利率を定めています。保険会社は預かった保険料を「◯%の利回りで運用できる」と見込んで、その分保険料を割り引いているのです。円建て保険も外貨建て保険も、もらえる保険金や解約返戻金が同じ場合で考えた時、外貨建て保険の予定利率は円建ての保険より高いため、その分保険料を安く抑えることができます。
外貨建て保険は「外貨建ての資産」でもあります。たとえば、米国のドル建て保険はドル建ての資産ともいえます。ドルと円の為替レートが円安に進むということは、同時にドル高になることでもあります。円安になると、円建ての資産の価値は目減りしてしまいますが、同時にドル建ての資産の価値が上昇するので、円の目減りに対応できる通貨分散としての役割も担えます。
外貨建て保険のメリットとしてよく紹介されるのが、外貨建て保険は、円建ての保険と同様に、生命保険料控除の対象という点です。年末調整や確定申告で手続きすると、所得を差し引くことができるため、所得税や住民税の負担を軽くすることができます。
外貨建て保険に入るなら円安・円高どっち?
外貨建て保険に入るなら円安と円高、どっちがいいのでしょうか。
その答えは、ズバリ、円高です。
なぜなら、円安のときよりも円高のときのほうが、日本円で支払う保険料が安くなるから。
たとえば、保険料が100ドルの外貨建て保険に入るとしましょう。ドルと円の為替レートがいくらであろうと、この外貨建て保険は100ドルです。しかし、日本円に換算したときの金額は、為替レートが円安か円高かで変わってきます。
【外貨建て保険の日本円での価格は?】※為替手数料は考慮しない
・1ドル=150円の場合(円安)…100ドル=1万5000円
・1ドル=125円の場合…100ドル=1万2500円
・1ドル=100円の場合(円高)…100ドル=1万円
同じ100ドルの保険でも、1ドル=100円の円高の場合は1万円で加入できるのに対し、1ドル=150円の円安の場合は1万5000円かかってしまいます。よって、外貨建て保険に加入するなら円高が得です。
反対に、外貨建て保険から保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取るときには円安のほうが得です。保険料のときと考えは同じで、外貨を円に戻すときの為替レートが円安になっていたほうが、円での金額が多くなるからです。
たとえば、解約返戻金が1万ドルの外貨建て保険に加入していたとします。この外貨建て保険の解約返戻金は、受け取るときの為替レートによって、次のようになります。
【外貨建て保険の解約返戻金の金額は?】※為替手数料は考慮しない
1ドル=150円の場合(円安)…1万ドル×150円=150万円
1ドル=125円の場合…1万ドル×125円=125万円
1ドル=100円の場合(円高)…1万ドル×100円=100万円
このように、円で受け取れる金額に違いが出てきます。
つまり外貨建て保険は、円高のときに加入して円安になったときに受け取るのがよい保険、というわけです。
受け取り時期が選べるならば、円安のタイミングで受け取るのが得だと覚えておきましょう。
外貨建て保険にもデメリットはある
外貨建て保険は、円高のときに加入して円安になったときに受け取るのがよいと紹介しましたが、それが狙ってできれば苦労はありませんよね。
実際は「円安のときに加入して円高になったときに受け取る」ことになる可能性も大いにあるのです。為替レートによっては、損する可能性があることを押さえておきましょう。
また、保険会社に支払う「為替手数料」や「解約控除」といった手数料にも注意が必要です。
為替手数料は、外貨建て保険の保険料を支払うときや、外貨で受け取った保険金を円に戻すときにかかる手数料です。
たとえば「1ドルあたり1円」などと保険会社ごとに定めています。外貨建て保険の保険料はある程度まとまった金額を一定期間支払うので、為替手数料の合計も多くなりがちです。
解約控除は、保険を解約するときに保険会社に支払う手数料。解約控除によって、解約返戻金の額が保険料を下回る「元本割れ」を起こす可能性があります。
以上、外貨建て保険は円安と円高どっちで加入したほうが得かについて見てきました。
外貨建て保険は、円高のときに加入し、円安になってから保険金などを受け取るほうがお得です。受け取り時期が選べるならば、円安のタイミングで受け取るのが得だと覚えておきましょう。一方で、外貨建て保険にもデメリットはあります。世の中に完璧な商品は存在しません。
そもそも外貨建て保険に加入するのがベターかどうかという問題もありますが、外貨建て保険のメリット・デメリットを踏まえて加入を検討しましょう。
頼藤 太希(よりふじ たいき)
マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍90冊、著書累計160万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。