6月ごろ届く「住民税決定通知書」確認すべき3つのポイント
2023.06.02

6月ごろ届く「住民税決定通知書」確認すべき3つのポイント

【この記事を読んでわかること】

  • 住民税決定通知書は毎年5月〜6月ごろに届く、住民税の金額が決まったことを知らせる書類。
  • 住民税決定通知書を見ると、住民税が正しく計算されているかを確認可能。間違いや不明点を自治体に問い合わせて、正しい税額に直してもらうことができる。
  • 住民税を減らすには、所得控除や税額控除をもれなく利用することが大切

毎年5月〜6月ごろになると手元に届く「住民税決定通知書」、きちんと目を通していますか?「難しそう」「面倒くさい」といってチェックしていない人は要注意。住民税決定通知書に間違いがあって、本来減らせるはずの税金が減っていない…ということもあるからです。そこで今回は、住民税決定通知書で確認すべき3つのポイントをご紹介。合わせて、住民税を節約する方法についても考えていきます。

住民税決定通知書とはどんなもの?

住民税決定通知書はその名のとおり、住民税の金額が決まったことを知らせる書類です。住民税の年度は毎年6月〜翌年5月末までなので、5月〜6月ごろに次の年度の住民税の税額が通知されるようになっています。

 

会社員や公務員の場合、住民税決定通知書は勤め先からもらえます。フリーランスや個人事業主の場合は、お住まいの自治体から郵送で届きます。なお、会社員や公務員の住民税は「特別徴収」といって、毎月の給与から源泉徴収されます。それに対してフリーランスや個人事業主の住民税は「普通徴収」といって、同封の納付書を使って自分で納付します。

 

住民税は、市町村民税と道府県民税の2つを合わせた税金です。東京23区では特別区民税・都民税と名前が少し変わりますが、どちらも同じものです。

 

住民税は、毎年1月1日時点で住所のある市区町村に両方まとめて支払います。そして、納めた住民税は公共施設、上下水道、ごみ処理、学校教育などの行政サービスの費用に充てられます。

住民税の金額は、所得割と均等割の合計で決まります。

 

所得割は前年1年間の所得に応じて金額が計算される税金です。所得割の税率は市町村民税と道府県民税の2つを合わせて一律10%です。そのため、所得が多いほど金額も多くなります。

 

対する均等割は、一定以上の所得がある人全員が同じ金額を負担する税金です。均等割はほとんどの自治体で市町村民税(特別区民税)が年3,500円、道府県民税(都民税)が年1,500円の合計5,000円ですが、自治体によってはこれに加算した税金を徴収している場合もあります。

住民税決定通知書の3つのチェックポイント

住民税決定通知書は、次のような書式になっています。実際には、ピンクの矢印のところでつながっていて、横長の書式になっています。

住民税決定通知書の書式

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(株)Money&You作成



「何やらこまごまと書いてあって難しそう」と思われるかもしれませんが、大丈夫です。確認すべきポイントを絞って1つずつ見ればわかりやすくなります。

 

住民税決定通知書で確認すべきポイントは、次の3つです。

住民税決定通知書の確認ポイント①:所得欄

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(株)Money&You作成



「給与収入」は年収、「給与所得」は給与収入から給与所得控除を差し引いた残りの金額です。給与所得控除は、会社員に認められている経費のようなものです。さらに、給与所得以外の所得がある場合には「その他の所得計」にその合計が記載されます。

 

会社員・公務員であれば、住民税決定通知書の所得欄と前年に勤め先からもらう「給与所得の源泉徴収票」と見比べます。また、フリーランスや個人事業主などの場合は所得欄と確定申告で申告した所得額を見比べます。ともに、金額が同じになっているかを確認しましょう。

 

特に、会社員や公務員などで転職をした方や、2か所以上で働いて給与をもらった方は、金額の合計が正しく反映されているかを確認してください。

住民税決定通知書の確認ポイント②:所得控除欄

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(株)Money&You作成



所得控除は、個人の事情に配慮して、税金の計算の元になる課税所得を減らせるしくみです。

所得控除には社会保険料控除、医療費控除、配偶者控除、扶養控除など全部で15種類あり、それぞれ控除できる条件や金額に違いがあります。

 

給与所得からこれらの控除を引いた金額が、課税所得となります。

 

年末調整や確定申告でこれらの控除を申告していると、「所得控除」のそれぞれの欄に控除される金額が記載されているはずです。しかし、所得控除の金額が間違っていたり、記載されていなかったりすると、所得控除が少なくなってしまいます。所得控除が少ないということは、課税所得が増えるということ。つまり、税金が増える原因になりかねません。所得控除が記載されているか、金額が正しいかを確認しましょう。

 

なお、ふるさと納税をしていると、(摘要)の欄に「寄附金税額控除」が記載されます。

確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる「ワンストップ特例制度」を利用した場合、控除額がすべて住民税から差し引かれます。したがって、記載されている市民税と県民税の合計額が「寄付金額−2,000円」になっていれば、ふるさと納税の手続きが正しく行われていることになります。

 

また、確定申告でふるさと納税の寄附金控除の手続きをした場合は、住民税と所得税からそれぞれ控除されます。市民税・県民税の合計金額と、寄附金控除で控除された所得税を合計した金額が「寄付金額−2,000円」になっていれば、ふるさと納税の手続きが正しく行われていることになります。

 

寄附金控除で控除された所得税の計算は複雑なので、税務署などに確認しましょう。

住民税決定通知書の確認ポイント③:税額欄

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(株)Money&You作成



税額欄には、市町村民税と道府県民税に対する税額控除前所得割額、税額控除額、所得割額、均等割額が記載されています。

 

税額控除前所得割額には、②で求めた課税所得に税率をかけた金額がそれぞれ記載されています。税率は基本的に、市町村民税・特別区民税が6%、道府県民税・都民税が4%です(政令指定都市は市民税8%、道府県民税2%)。

 

所得割の額は、税額控除前所得割額から税額控除額を引いた金額(100円未満切り捨て)になります。ふるさと納税をした場合や、住宅ローン控除がある場合などは、この税額控除前所得割額からさらに税金を差し引く税額控除ができます。申告した金額が反映されているか、確認してください。控除された金額は、「税額控除額」の欄に記載されます。

 

住宅ローン控除は原則として所得税が控除されますが、所得税から控除しきれなかった分は、住民税からも控除される仕組みです。住民税からの控除上限額は「前年度の課税所得×5%(最高9万7,500円)」です(2021年までの制度改正前の住宅ローン控除を利用していた場合は「前年度の課税所得×7%(最高13万6,500円)」が適用されます)。

 

また、均等割は基本的には道府県民税・都民税が1,500円、市町村民税・特別区民税が3,500円ですが、一部地域では多少異なります。

 

もしも住民税決定通知書に間違いがあったら、お住まいの自治体に必ず申し出て確認しましょう。税金はあくまで自己申告なので、間違いに気づかなければそのまま高い税金を支払うことになる可能性があります。ですから、住民税決定通知書はきちんと確認した方がいい、というわけです。

住民税を節約するにはどうしたらいい?

住民税は行政サービスの費用をまかなう大切な税金ではありますが、できれば支払いを減らしたいですよね。そこで、住民税を減らすことを考えてみましょう。

 

上でも少し触れましたが、住民税の所得割の計算の元になる「課税所得」を算出するときには、給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引きます。また、税額控除といって、税額を直接差し引ける控除もあります。

 

このうち、給与所得控除は給与の額によって自動的に決まってしまいます。しかし、所得控除や税額控除は、場合によっては増やせるかもしれません。

 

所得控除では、年末調整や確定申告で申告していないものがあれば忘れずに申告するようにしましょう。とくに医療費控除や生命保険料控除など、提出を忘れているものがあれば、もれなく提出しましょう。

 

また、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用すると、老後のために積み立てたお金(掛金)をすべて「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できます。掛金は60歳まで原則引き出せませんが、自分の将来のお金を貯めながら住民税が減らせます。

 

税額控除では、ふるさと納税が使えます。ふるさと納税をすると、納税(厳密には寄附)した金額から2,000円を引いた金額を税金からダイレクトに差し引くことができます。そのうえ、ふるさと納税をした自治体からお礼の品(返礼品)がもらえます。

 

また、これらの控除の手続きを知らずに、取り戻せるはずの税金を取り戻してなかった場合、年末調整や確定申告の期間が過ぎていても、5年以内であれば、「還付申告」の手続きで払いすぎた税金を取り戻せます。還付申告の手続きは、「所得税の更正の請求書」という書類に必要事項を記入し、該当年の証明書を添えて税務署に提出することでできます。

 

所得控除や税額控除の手続きをしていなかった場合は、その証明書を持ってお近くの税務署に相談してみましょう。手続きの仕方を具体的に教えてくれます。

 

住民税のしくみ、住民税決定通知書の見方、住民税を減らす方法を解説してきました。これまで住民税決定通知書をよく見てこなかった方も、今年こそはぜひよく見て、税額に間違いがないかを確認してください。また、還付申告できるものがあれば、今からでも税金が取り戻せますので、ぜひチェックしてみてください。

高山 一恵

高山 一恵(たかやま かずえ)

Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設⽴。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を⾏ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)、『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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