公的介護保険とは?しくみと保険料・自己負担・受けられる介護サービスを解説
2023.01.06

公的介護保険とは?
しくみと保険料・自己負担・受けられる介護サービスを解説

今は元気だから大丈夫と思っていても、介護はある日突然やってくるもの。自分の介護はもちろん、家族や両親などの介護がもし今必要になったら、困ってしまう方が大半でしょう。こんなとき、公的介護保険を利用することで、介護にかかる負担を減らせます。


今回は、公的介護保険のしくみ、公的介護保険の保険料や自己負担額、公的介護保険で受けられる介護サービス、さらには公的介護保険の申請方法や負担が大きくなった場合に利用できる制度まで、公的介護保険を詳しく解説します。

公的介護保険はどんな制度? 

公的介護保険は、介護が必要になったときに介護サービスを受けられるようにする社会保険の制度です。日本では、40歳になるとすべての人が公的介護保険に加入し、介護保険料を負担します。そして要介護認定を受け、認定された介護度に応じて給付が受けられるしくみになっています。


公的介護保険に加入する人(被保険者)は、年齢によって2つに分けられます。

公的介護保険の被保険者

第1号被保険者 第2号被保険者
年齢 65歳以上 40歳から64歳まで
給付の対象 要介護・要支援となった人 要介護・要支援になった原因が「老化が原因の病気(特定疾病)」の人
保険料 市区町村ごとに決定
所得により異なる
加入している医療保険により決定
保険料の支払い方法 年金額が年18万円以上の人は年金から天引き(特別徴収)
年18万円未満の人は納付書で納付(普通徴収)
会社員・公務員は給与天引き
フリーランス・自営業は国民健康保険に上乗せ

(株)Money&You作成


40歳になると公的介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料の支払いがスタートします。ただ、第2号被保険者が公的介護保険から受けられる介護サービスは、老化が原因の特定疾病(16疾病)によって要介護状態になった場合のみとなっています。


65歳になると公的介護保険の第1号被保険者となります。第1号被保険者になると、要介護状態になった理由に関係なく介護サービスの対象となります。


公的介護保険の第2号被保険者は、介護保険料を健康保険料や国民健康保険料と一緒に支払います。会社員や公務員の場合は、健康保険料に加えて介護保険料が給与から天引きされます。自営業やフリーランスの場合は、国民健康保険料に上乗せされます。


第2号被保険者の介護保険料は、給与などの報酬から決まる標準報酬月額に、所定の介護保険料率をかけた金額です。介護保険料率は、加入している健康保険により異なります。


たとえば、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している人の場合、介護保険料率は1.64%(2022年度)です。東京都・標準報酬月額26万円の人だとして計算すると、介護保険料は26万円×1.64%=4,264円ですが、半額は会社が負担(労使折半)してくれるので、自分で負担する介護保険料は月2,132円です。


一方、第1号被保険者の介護保険料は、年金額が年18万円以上の方は特別徴収といって、年金から介護保険料が天引きされます。それ以外の方は普通徴収といって、口座振替や納付書を使って自分で支払います。


第1号被保険者の介護保険料は、前年度の所得を市区町村ごとに定める区分に当てはめて算出します。


たとえば、

・東京都文京区在住、65歳〜74歳

・扶養親族無し

・年金は年間240万円

・公的年金等の雑所得は130万円


の人がいたとします。


介護保険料の区分は、市区町村により異なります。たとえば東京都文京区の場合、所得によって15の段階が設けられています。「公的年金等の雑所得」130万円がその「第7段階」にあたるため、年間の介護保険料(2022年度)は90,300円です。これを12で割った毎月の介護保険料は7,525円となります。65歳以降の介護保険料には会社の負担がないため、全額を自分で負担する点には注意が必要です。


なお、介護保険料の支払いは40歳以降、生涯続きます。介護サービスを受ける側になっても支払いは続きます。

公的介護保険の支給限度額と自己負担額

公的介護保険の支給限度額は、要介護認定を受けることで決まる要支援1・2、要介護1〜5の7段階の「要介護度」に応じて変わります。

介護サービスの支給限度額

介護度 1カ月あたりの支給限度額 自己負担額
- - 1割 2割 3割
要支援1 50,320円 5,032円 10,064円 15,096円
要支援2 105,310円 10,531円 21,062円 31,593円
要介護1 167,650円 16,765円 33,530円 50,295円
要介護2 197,050円 19,705円 39,410円 59,115円
要介護3 270,480円 27,048円 54,096円 81,144円
要介護4 309,380円 30,938円 61,876円 92,814円
要介護5 362,170円 36,217円 72,434円 108,651円

※自己負担額は基本的に1割だが、一定以上の所得がある場合は2割・3割

(株)Money&You作成


表のように、要介護度が高いほど、利用限度額も高額になります。


また、利用者の所得によって自己負担の割合が変わります。通常は1割負担ですが、所得が多い人は2割、3割負担となります。
 

公的介護保険はどう申請する?

公的介護保険の介護サービスを受けるには、要介護度の認定を受ける必要があります。要介護度認定までの流れは、次のとおりです。

①市区町村の窓口で要介護認定の申請を行う
②市区町村の調査員の訪問による認定調査を受ける
③主治医(かかりつけ医)に主治医意見書を作成してもらう
④審査判定によって要介護度の判定が行われる(原則30日以内)
⑤要介護度が認定される


要介護度が決まり、介護サービスを利用する場合には、介護サービス計画(ケアプラン)の作成が必要です。ケアプランは、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)に作成を依頼することで、担当のケアマネージャーが作成してくれます。このケアプランに基づいた介護サービスを原則1割負担(または2割・3割負担)で受けることができる、というわけです。

介護費用の負担が大きくなったときは?

公的介護保険には、1カ月の自己負担額が一定の限度額を超えた場合にその超えた部分が戻ってくる「高額介護サービス費」という制度が用意されています。1カ月の医療費が高額になった場合には「高額療養費制度」で払い戻しが受けられることをご存じの方は多いでしょう。その介護版というと、わかりやすいでしょう。

高額介護サービス費の負担限度額

区分 負担の上限額(月額)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 14万100円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 9万3,000円(世帯)
住民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 4万4,400円(世帯)
前年の公的年金等収入額金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下 2万4,600円(世帯)、1万5,000円(個人)
生活保護を受給している方等 1万5,000円(世帯)

(株)Money&You作成


公的介護保険の自己負担額の上限額は、住民税の課税される世帯(現役並み所得者がいる世帯)で14万100円、住民税非課税世帯で2万4600円となっています。


また、長期間にわたって医療費と介護費がかかり続けると、家計の負担が大きくなってしまいます。そんなときに利用したいのが高額医療・高額介護合算制度。同一世帯で毎年8月1日〜翌年7月31日までの1年間にかかった医療費・介護費の自己負担額の合計額(自己負担限度額)が上限を超えた場合、その超えた金額を受け取れます。


高額療養費制度や高額介護サービス費制度を利用して自己負担が減っても、なお自己負担はあります。高額医療・高額介護合算制度を利用すれば、その自己負担をさらに軽減できるというわけです。

高額医療・高額介護合算制度の自己負担限度額の上限

70歳未満の世帯 70歳〜74歳の世帯 75歳以上の世帯
年収約1160万円以上 212万円 212万円 212万円
年収約770万円〜1160万円 141万円 141万円 141万円
年収約370万円〜770万円 67万円 67万円 67万円
年収約370万円以下 56万円 56万円 56万円
住民税非課税世帯 34万円 31万円 31万円
住民税非課税世帯で年金収入80万円以下など、一定基準に満たない方 19万円 19万円

(株)Money&You作成


高額医療・高額介護合算制度の自己負担限度額は、世帯の年齢や所得によって異なります。年間の医療費・介護費を計算して、制度が利用できるか確認しましょう。


公的介護保険のしくみを解説してきました。公的介護保険は自己負担額1割〜3割で必要な介護サービスを受けることができるという、介護が必要になった方の心強い制度です。突然やってくる介護に備えるためにも、しくみをよく理解して、忘れずに活用しましょう。

高山 一恵

高山 一恵(たかやま かずえ)

Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設⽴。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を⾏ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)、『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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