転職・退職したとき、保険はどうなる?どんな見直しが必要?
2023.05.05

転職・退職したとき、保険はどうなる?どんな見直しが必要?

会社員が加入している社会保険には、主に健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の5つがあります。この中で転職・退職時に問題になるのが、健康保険です。

日本は「国民皆保険」といって、誰もが何らかの健康保険に加入しなくてはなりません。しかし、会社を退職すると、それまで加入した会社の健康保険から脱退します。そのため、新たに健康保険に加入する必要があるのです。では、どの健康保険を選べばいいのでしょうか。

今回は、転職・退職後の健康保険の種類と選び方をご紹介。合わせて、見直しが必要になる厚生年金や民間保険についても、解説します。

退職後の健康保険はどれを選ぶ?

転職・退職後の健康保険の選択肢には、大きく分けて4つあります。


【健康保険の4つの選択肢】

  ①再雇用・再就職先の
健康保険に加入する
②家族の健康保険に入る ③任意継続する ④国民健康保険に加入する
手続き先 再雇用・再就職した会社
(入社日から5日以内)
家族が勤めている会社
(退職日から5日以内)
加入していた健康保険組合、または協会けんぽ(退職日の翌日から20日以内) お住まいの自治体
(退職日の翌日から14日以内)
加入条件 ・所定労働時間・所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上 
または
・従業員数101人以上の会社
・週の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が2か月超見込まれる
・賃金の月額が8万8000円以上
・学生ではない
をすべて満たす場合
・年収180万円未満
(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障がい者)
・年収130万円未満
(60歳未満)
かつ家族の年収の1/2未満
・退職前に健康保険の被保険者期間が2か月以上あること ・国内に住所があること
加入できる期間 退職まで 74歳まで 退職後2年間 74歳まで
保険料の計算 標準報酬月額
(40歳〜64歳までの場合、介護保険料率が含まれる)
会社と折半して負担
被扶養者の保険料負担なし 退職時の標準報酬月額
(40歳〜64歳までの場合、介護保険料率が含まれる)
全額自己負担
前年の所得をもとに、
自治体ごとに計算

※2024年10月からは「従業員数51人以上の会社」に拡大

(株)Money&You作成

転職・退職後の健康保険①:再就職・再雇用先の健康保険に加入する

正社員として再就職した・再雇用された場合や、週の勤務時間が20時間以上あるなどの条件を満たす会社に再就職した場合には、勤め先の健康保険に加入できます。

 

健康保険の保険料は、これまでと同じく給与をもとに計算されます。給与が高いほど、支払う保険料も多くなります。また、40歳から64歳までの間は、介護保険の保険料も支払います。なお、健康保険・介護保険の保険料は勤務先と折半して支払います。

 

健康保険の手続きは、再就職・再雇用先の会社で行います。

 

再就職した日から5日以内に「健康保険被保険者資格取得届」を事業主に提出します。また、扶養家族がいる場合は、「健康保険被扶養者届」と資格の確認のための収入を証明する書類も一緒に提出します。

転職・退職後の健康保険②:家族の健康保険に入る

配偶者や子など、健康保険に加入している家族が生計を維持しているならば、その家族に扶養してもらう(被扶養者になる)ことで、健康保険に加入できます。家族に扶養してもらえば、健康保険料の負担はゼロになります。

 

家族に扶養してもらうには、年収180万円未満(60歳以上)、年収130万円未満(60歳未満)で、家族の年収の2分の1未満といった年収の条件を満たす必要があります。

 

家族の健康保険に入る場合は、その家族の会社での手続きが必要です。こちらも、退職日から5日以内の申請が必要なので、家族にあらかじめ話しておき、退職したらすぐに手続きするようにしましょう。

転職・退職後の健康保険③:任意継続する

任意継続は、退職する前の会社の健康保険に引き続き加入できる制度です。任意継続すると、これまで会社が折半して負担してくれていた保険料も自分で支払う必要があるため、保険料負担は増加します。しかし、次に紹介する国民健康保険よりも保険料を抑えられる場合があります。40歳から64歳までの間は、介護保険の保険料も支払います。ただし、そもそも会社に勤めていないため、病気やケガで会社に勤められないときの助けとなる傷病手当金はもらえません。

 

任意継続ができるのは退職後2年間のみ。退職の翌日から20日以内に手続きすることが条件です。なお、任意継続では国民健康保険とは違って、家族を扶養に入れることができます。


そのため、保険料が安くなる場合があります。

転職・退職後の健康保険④:国民健康保険に加入する

①〜③までの保険に加入しない場合は、国民健康保険に加入します。国民健康保険は、自営業者やフリーランスなど、会社勤めではない方が加入する健康保険です。退職日の翌日から14日以内に手続きを行います。

 

国民健康保険の保険料は前年の所得で決まります。そのため、退職後すぐに国民健康保険に加入すると、収入のない年に前年の所得に応じた高い保険料を支払わなければならなくなる可能性があります。

 

以上4つの保険のうち、再雇用・再就職する場合には①の一択。新しい勤務先の健康保険に加入します。

 

再雇用・再就職しない場合、もっとも保険料が抑えられるのは②の家族の健康保険です。条件を満たして、家族に扶養してもらうことができれば、保険料の負担をなくせます。

 

①②を選べない場合、③の任意継続と④の国民健康保険のどちらかを選ぶ必要があります。この場合は保険料を見比べて、安い方を選ぶようにします。

 

人により、またお住まいの市区町村により異なりますが、「退職1年目は任意継続・2年目は国民健康保険」とすると、保険料を減らせる可能性が高いでしょう。

 

退職1年目は前年の所得が高いため、国民健康保険の保険料も高くなってしまいがち。任意継続を選んだ方が、保険料が安く済むケースが多いのです。それに対して退職2年目は、退職1年目の所得をもとに国民健康保険の保険料が計算されるため、今度は任意継続よりも保険料が安くなる可能性がある、というわけです。

 

なお、以前は任意継続を選ぶと、2年間はやめることができなかったのですが、2022年1月からは任意継続をやめられるようになっています。

厚生年金も切り替えが必要

国の公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。国民年金は原則20歳から60歳までのすべての人が加入する年金、厚生年金は会社員や公務員が加入する年金です。したがって、仮に60歳より前に会社を退職して働かない場合は、国民年金に切り替える必要があります。

 

厚生年金の脱退の手続きは会社がしてくれますが、国民年金への切り替えは自分で行います。離職票や厚生年金の資格喪失証明書といった退職を証明する書類、印鑑、年金手帳(または基礎年金番号通知書など、基礎年金番号がわかる書類)を持って市区町村の窓口で手続きします。国民年金への切り替えは退職日の翌日から14日以内に行う必要があるので、忘れずに手続きしましょう。

 

会社員・公務員の厚生年金保険料には国民年金保険料も含まれていますが、退職後は厚生年金からも脱退してしまうため、国民年金保険料を自分で支払う必要があります。国民年金保険料は月1万6,520円(2023年度)です。年度により変動しますが、おおよそ年間20万円かかります。

 

なお、20歳から60歳までの間に国民年金保険料の未納期間がある場合には、国民年金保険料の未納期間に応じて将来もらえる国民年金が減ってしまいます。

 

国民年金保険料を40年納めた場合の満額は年79万5,000円(67歳以下)・79万2,600円(68歳以上)です(2023年度)。しかし、仮に国民年金保険料を1年未納にしたとすると、将来もらえる国民年金の金額はおおよそ年2万円減ってしまいます。

 

国民年金保険料は納付期限から2年以内に納めないと未納になってしまいます。国民年金保険料を納めるのが難しい場合、申請することで「猶予」「納付免除」の扱いを受けることもできますが、この場合も10年以内に納めないと未納となってしまいます。

 

もしも、2年以上前(10年以上前)の未納にしている期間があるのであれば、国民年金の任意加入がおすすめです。任意加入は、60歳以上65歳未満の方が自分で国民年金保険料を支払うことで、国民年金の加入期間を増やせる制度です。仮に、任意加入で国民年金の加入期間を5年(60カ月)増やせれば、単純計算で年10万円ほど国民年金額が増えます。

自分で加入している保険も見直してみよう

転職・退職にあたって健康保険や年金を見直すとともに、自分で加入していた保険も見直してみましょう。転職・退職によって生活が変わると、もしものことがあったときにこれまでの保険では対応できなくなっている可能性があります。

 

たとえば、定年退職をした方であれば、子どもも大きくなって社会人になっていることも少なくないでしょう。こうした場合は、大きな死亡保障は必要ないかもしれません。また、保障が必要だとしても、不相応に高額の保障は必要ないかもしれません。

 

保障がいつまで、いくら必要かを検討した上で、自分に合った保障を過不足なく用意できるといいですね。保険の見直しによって、保険料を抑えることにもつながるでしょう。

 

また、転職・退職される方の中には、会社で加入した生命保険の保険料を給与天引きで支払っている場合もあるでしょう。「団体扱い」などと呼ばれます。団体扱いになっている生命保険は、一般の生命保険よりも保険料が割引されている場合があります。

 

しかし、団体扱いの保険はあくまでその会社に勤める従業員のための保険ですので、転職・退職をすると保険料の割引が受けられなくなってしまいます。手続きをすることで保険料を自分の口座から引き落とすようにして、引き続き保障を得ることはできますが、これまでの生命保険の保険料よりも値上がりする可能性があることには注意しましょう。

 

転職・退職時の健康保険・厚生年金保険・民間の保険の手続きや見直しのポイントを紹介してきました。特に退職して再雇用・再就職しない場合は、家族の健康保険に入れないかを要チェック。入れない場合は「退職1年目は任意継続、2年目は国民健康保険」を検討しましょう。支払う保険料をなるべく少なくできる方法を選びましょう。

高山 一恵

高山 一恵(たかやま かずえ)

Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設⽴。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を⾏ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)、『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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